コリ固まる職場

 あなたは社長さん?あるいはCEO?そんなに立派なものじゃないなんていっても、日々企業経営に携わっている方なら、ちょっと働く手を止め、あなたの職場を見渡して欲しい。そこには眉間に皺を寄せながら、パソコンの画面に顔を近づけている人や、自分の肩や腰に手を当て、唸っている同僚の姿が見えるのではないだろうか。あるいは段ボールの上げ下ろしや中腰での作業でしかめっ面をしている従業員は?もしかすると、あなた自身が険しい顔でうめきながら仕事をしていたりはしないだろうか。「ちょっとだけこの肩を、この腰を揉んでくれたらもうちょっと頑張れるのに。」そんな思いを抱いた事はないだろうか。

 今の職場が嫌いなわけではないが、正直仕事がいっぱいで、毎日疲れはてて帰宅する。重たい足を引きずるように職場と自宅の行き来しかできなくなってしまっている。そんなコリ固まった毎日にウンザリな方、あるいはそういう同僚が多い会社の方にはぜひ続きを読んでもらいたい。

「健康」の時代

 最近、社員の健康に注目する企業が増えてきている。高齢化社会が進み、働き手が少なくなっていくといわれる現代日本において、労働力の確保と、業務の効率化、能率の向上は、どの企業にとっても緊急を要する課題といえる。オフィスの環境を整え、働きやすい職場づくりをしているかどうか、ブラック オア ホワイトが新卒を迎える学生たちの企業選びの基準になりつつある。さらには「生涯労働」というワードもよく見られるようになってきた。少なくなっている働き手をどのように確保し、長く健康で働いてもらうかに、注目が集まっている。メタボリックな仕事をよりスリムに、よりヘルシーに。今はまさに「健康」の時代の黎明期なのだ。

 政府は経済産業省が中心となって「健康経営」というのを推進している。

 健康経営とは、企業がそこで働く従業員の健康保持・増進に取り組むことが、「人」の行う仕事の効率化や能率の向上に繋がり、将来的な収益性等を高めるための“投資”になるという考え方であり、従業員の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に取り組む企業経営の方法を言う。

 経済産業省が2017年から始めた「健康経営優良法人認定制度」で認定された法人の数は、初年度の2017年は中小規模法人・大規模法人あわせて458法人だったが、2020年には6186法人と、わずか3年で13.5もの広がりを見せている。「いかにして健康で、生き生きと長く働いていけるか」というのは今の社会の最大の関心事のひとつである。

「福利厚生」は会社の武器

 企業が積極的に社員の健康を守り、ハツラツと働いてもらうための環境づくりに力を入れることは、将来にわたって労働力を確保し、効率のよい働き方につながる“投資”である。

 とはいえ、「健康」というのは一朝一夕になるものではない。「健康」は複合コピー機のような設備とは違うから、たとえ経営者の鶴の一声があったとしても、「よし、明日から全部署に“健康”を設置して・・・。」という風にはならない。すでに今ある会社の形や仕事の仕方をいきなり変えることはできないし、どのように“健康”に投資を行えばいいのか、具体的な方法が思いつかないという方もいるだろう。しかしお忘れではないだろうか。実はどの企業でも簡単に“健康”を職場に取り入れる武器があることを。全従業員へ平等に“健康”をお勧めできる「福利厚生」という制度があるではないか。普段はちょっと面倒なイメージであるが、「福利厚生」というものを経営の武器として活用しない手はない。

 実際に、マッサージや、鍼灸治療というものを会社の福利厚生として導入する企業がその数を伸ばしている。前述の「ちょっとこの肩を、この腰を・・・。」の要望に応えようというのだ。

 マッサージや鍼灸治療を実際に受けてみた事はあるだろうか。時に痛みを伴う施術もあるが、終わってみるとすっきりと軽くなり、別人の身体のように感じた人も少なくないはずだ。より格安に、しかも会社に何の気兼ねなく、そんな治療が受けられたら・・・。控えめに言って最の高ではないだろうか。

マッサージや鍼灸治療の3つの効果

 健康への関心が高まるとともに、リラクゼーション分野の一つとして注目を集めるようになったマッサージや鍼灸治療であるが、中にはその効果に懐疑的な方もいらっしゃると思うので、その効果について説明しよう。

 いわゆるマッサージと鍼灸治療ではアプローチの方法は異なる部分もあるが、その効果や目的については似通ったところがある。

 大きく分けるとそれは次の3つがあげられる。

  1. 痛みなどの症状緩和・改善
  2. 身体のバランスを整える
  3. 病気を未然に防ぐ

1.痛みなどの症状緩和・改善

 マッサージでは身体のいろいろな部分を揉んだり圧したり伸ばしたりすることにより、凝り固まった筋肉をほぐし、滞っていた血液の流れやリンパの流れを改善することで、痛みやなどの症状を緩和・改善することができる。長時間の座り仕事で同じ姿勢をとり続けたり、または単純な肉体労働による筋肉の疲労のせいで生じる腰や肩の凝り、痛み。こういった“仕事を邪魔する症状”の緩和・改善に実に効果的だ。

 鍼灸治療では鍼の刺激や、灸による熱刺激を使ってこれを行う。そのメカニズムは未知な部分も多いが、実際に効果があることは世界保健機関(WHO)も認めている。
 マッサージにしろ鍼灸治療にしろ、古くから存在する健康増進の術であり、長い人間の歴史の中で培ってきた知恵と技術の結晶と言えよう。

 

2.身体のバランスを整える

 マッサージや鍼灸治療の効果は体のもっと内側の部分にも及ぶ。凝りや痛みの緩和・改善でリラックスすること、また血液やリンパの流れが整うことで、内臓の動きが活発となり、便秘や胃痛の改善、眼精疲労の回復など、だれもが経験している症状も良くなるのだ。

 自律神経失調症というのを聞いたことがあるだろう。それと診断されることが多い現代病であるが、簡単に言うと“戦い時”に使う興奮の神経回路「交感神経」と、“安らぎの時”に使う休息の神経回路「副交感神経」というのがあり、その切り替えがうまくいかなくなるという病だ。現代人は副交感神経がうまく使えず交感神経が常に優位な状況にある。常に臨戦態勢なのだ。体の内側も外側も休息できず、疲労が回復しないのでいずれどこかにガタが来て重篤な病に発展する。「ON-OFFの切り替えが下手」なんて言う人もいるが、それは単なる得手不得手の問題ではなく、大きな病の始まりかもしれない。

 マッサージや鍼灸治療ではこの自律神経の働きを整えることもできる。
 身体の様々な部分の調整を行い、バランスを整えることで、身体の内側から健康を作り、維持することができるのだ。

 

3.病気を未然に防ぐ

単なる凝りや張りと言っても決して侮ってはいけない。自律神経のところでも触れたが、それはより重篤な病への序章なのかもしれない。日ごろからマッサージや鍼灸治療を利用することで、人生をも壊しかねない大病へのリスクを減らすことができる。

そもそもマッサージや、鍼灸というのは、いわゆる病院での治療とは全く考え方が違う。いわゆる病院というものは一般的に、日常生活に支障が出るほどの症状が出た場合、つまり既に病にかかった後に訪れ、患部を取り除いたり、薬の服用で症状を抑えたりすることで「病」という状況を取り除く為のものである。逆にマッサージや鍼灸というのは、日常生活に支障が出る前、あるいは重篤な病気にかかる前(東洋医学の言葉で「未病」というのがある。病気になる以前の、病気にかかるリスクのある状態を言うそうだ。)に訪れ、それ以上の悪化を未然に防ぎ、より良い状態へ近づけるための助言をもらい、より良い生活習慣への一助とするのが目的である。最終的に重い病気にならないようにするための一助となるのだ。

職場にマッサージ・鍼灸治療を取り入れる

 では実際にどのような形で職場にマッサージや鍼灸治療を取り入れるのか。具体的には次のようなやり方でマッサージや鍼灸治療を福利厚生として利用する企業が多いようだ。

1.社内常駐型

 会社のなかにマッサージや鍼灸治療を行うための専用の施設を設け、施術者雇い常駐させる方法だ。
 社員が職場を離れることなく施術を受けることができるため、社員への認知もしやすく利用を促しやすい反面、スペースに余裕がないと実施できないというデメリットがある。また、企業として設備を整え施術者を雇用するため、初期費用も維持費もかかってしまう。社員にとってはとてもありがたいが、実現できる企業は限られる。

2.出張型

 例えば月にこの日とこの日、などあらかじめ契約した日時に施術者に出張してもらい施術を行う方法だ。費用は契約した日数や時間などにもよってまちまちであるが、社内常駐型よりは節約できる。職場内で施術してもらえるため、利用しやすいが、一時的に会議室などを施術スペースとして割り当てるため、やはり空きスペースがないとできない点、時間や利用日が限られてしまい、また時間の延長に追加費用が発生するなど、制限がついてしまうのは否めない。

3.来院型

 あらかじめ企業が契約しておいた店舗に社員が来院すると、無料もしくは格安でサービスが受けられるというものだ。企業としてのコストはだいぶ抑えられるものの、社員が意識的に来院しなければ施術を受けられないため、利用率が低くなったり、福利厚生として形骸化したりしてしまう恐れがあるのがデメリットだ。

 どの方法にもメリット・デメリットがある。会社の規模や状況に応じて上手に取り入れればよいと思うが、肝心なのは制度・ルールだけ整えればいいというものではないということだ。経営者も含め全従業員が「健康」について関心をもち、意識的に利用できるようにすることだ。どうしたらその制度を利用してもらえるかよく考え、運用していってもらいたい。

リラクゼーション⇔リスクマネージメント

 一度病気にかかってしまえば、たとえそれがすぐに命に及ぶようなものではなかったとしても、いつもと同じように仕事を行うのは誰にも不可能なはずだ。もしそれを未然に防ぐことができたら、それは会社にとって、社員が健全な業務の遂行を滞りなく続けることにつながり、コンスタントに利益を生み出し続ける企業活動の大きな助けとなるはずだ。

 人ひとりでできることには限りがある。しかし何人もの人が協力することで、一人ではできないことをも可能にすることができる。だから企業は多くの人を雇用し、従業員はそれぞれが自分の受け持つ仕事を全うすることで、全体として大きな利益を生みだすことができるのだ。一人の従業員の健康を守ることは、一人の労働力を守るだけではない。その従業員の人生を守ることであり、充実した生活への満足感と仕事への誇りをもって、より長く意欲的にあなたの会社に貢献することだろう。イキイキと働く従業員が増えてくれば当然、会社全体が生き生きとしてくる。

 我々は目まぐるしく変化を続ける社会の中に生きている。あなたの会社の経営を脅かす危機的状況がいつ生まれるとも限らない。しかし従業員満足度の高い企業はたとえどんな危機に直面したとしても、その高いロイヤリティーが強みとなり、生き残ることができるだろう。労働力という一義的なことだけではなく、あなたの会社にマッサージや鍼灸治療というリラクゼーションを取り入れることは、世にあふれる様々な危機に対応するだけの“会社として体力”を養い、より長く企業経営を続けるためのリスクマネージメントにつながるのだ。マッサージや鍼灸治療は、あなたの会社をも、より健康で長生きさせてくれるに違いない。

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